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ぐるりのこと。

動物と人間のあいだ

努力の差異

これといって努力をしてこなかった男は、人生で1度だけ努力をしてみたいと思った。
それが仕事だった。そっち側へ行くには力が必要だと思った。ちょうど都合が良いと思った。だけど負けたのだ。

今までなんとなくで人並み以上にやってきた男は努力の経験を持ち合わせていなかった。いつもと変わらずなんとなくで人並み以上に出来ると思った。努力の才能も持ち合わせていなかった。努力の味を初めて知った。

努力ってものは一種の安定剤なのかもしれない。
幼い頃からそれは美徳と知らされる。ただ教科書やノートに向かってペンを持っているだけで褒められる。その成果と心情は無視されたままに。

高校生のときに1度心が折れたことがある。病院で何かを聞かれた際に「なんでみんな報われない努力をしているのか分からない」と言いながら医者に情動失禁と記述されたことを今でも覚えている。当時から変わらず「ただやる」ってことには嫌悪感を示す。それは生き辛いから、人にはそれぞれ役割ってものがあると考えるようになったのだろうか。

これといって努力をしてこなかった男は、再び努力を始める。
努力を安定剤として使っているのかも、なんて思いはじめている。
だってそこにはあの頃のような情熱はないのだから。

あのとき自分の努力はなぜ負けたのか。負けなければ今も幸せだよ、やり方が間違っていたんだよ、なんて言っても何も変わらないことは知っている。でもそう言ってしまえば割り切れるのかななんて思ったりもして。

「始めて努力して負けたんだよ」なんてまた子供じみた言い訳なんだろう。
挙げ句の果てには家庭のことまで持ち出しちゃったりして。
でもそんなおかげで、自分に向き合ってこなかったこの人生と向き合ってみようかと思ってる。遅ればせながら。

今は目標も目的もないけど、なんなら気力だってないんだけど、なんとなく、なんとなーく前向きになっているんだ。

本音を言うのは苦手だから、心の声を伝える文章はいまだに書けないけど。
せめてもの備忘録に。